医院を開業する際に重要な地域の決め方

医院開業において地域が重要な理由

どの地域に医院を開業するのか、どのエリアに診療所やクリニックを置くのか、これは非常に重要な問題であり、決しておろそかにするわけにはいきません。
開業医が成功するか否かは、この地域選びにかかっていると言っても過言ではないでしょう。
実際に、地域やエリア選びを間違えてしまったが故にクリニックを閉めることになった、移転することになったという医師は少なくありません。

地域は、それぞれ特性を持っています。
それはその地域が長い時間をかけて守り抜いてきた文化かもしれませんし、発展した末に持ち合わせることになった特性かもしれません。
当然、それらはそこに住む人々によってもたらされたものなのでしょう。
そうした特性を把握せずにイメージや固定観念によって選定してしまえば、もしそれが本質とズレていた場合、患者を十分に集めることができなくなってしまいます。

例えば、高齢者の多い地域に若い人向けの美容系クリニックを開業しても、おそらく集患は難しいでしょう。
賃料や土地代などの費用は安く済むかもしれませんが、それすら回収できずに終わってしまう可能性が高くなるはず。
このように、その地域のニーズを十分に掴めなければ利益を上げることはできないため、地域選びは非常に重要な要素となってくるのです。

 

開業する地域を選ぶポイント

具体的に開業する地域を選定する際には、入念なリサーチが必要です。
立地診断と呼ばれることもありますが、これを丁寧に行い、失敗のない立地選定を行っていかなければいけません。
開業する地域を選ぶポイントを5つほど挙げてみます。

・住んでいる人や通っている人が多い
・交通の便がよく通いやすい環境が整っている
・世間に対する街のイメージが良い
・商業施設が多く立ち並んでいる
・他の医療施設があるorない

これらに全て当てはまっている必要はありません。
住人の多いエリアと商業施設が多いエリアは必ずしも一致しませんし、他の医療施設があるかないか、これもどちらが必ず良いとは限らず、どちらを選ぶのがベストなのかは他の要素も絡んで決定されるからです。

ただ、確認しておかなければならないポイントであることは確かでしょう。
少なくとも、人が少ない地域ではなかなか利益があげられませんし、交通の便や街のイメージが悪ければ外から足を運んでくれる患者も減ってしまうため、ここにもしっかりとフォーカスしながら地域の選定を行うことが求められてきます。

物件を選ぶポイント

地域やエリアを選定したら、次に決めなければならないのが物件です。

・駅やバス停から近い
・人通りがある
・ビルや建物自体に清潔感がある
・診療や待合室のための十分なスペースが確保できる
・コンセプトやイメージにマッチしている

物件選びはこだわるとキリがありませんが、成功したいのであれば、やはりこだわらなければいけません。
上でピックアップしたのは、最低限こだわっておきたいポイントです。
地域選びと共通する点はありますが、同じ地域の中でも道が一本異なれば、人通りや通いやすさやイメージも変わってくることがあるため、何度も足を運んで入念にチェックしておくべきでしょう。

外観も重要ですし、それがコンセプトにマッチしているか否かも無視できません。
100%完璧な物件を見つけるのは難しいものの、できるだけそれに近づけるよう、時間をかけて物件選びを行うことが重要になってきます。

医院開業に必要な届け出や手続きは?

医院開業に必要な手続き

場所を確保したら、それで診療所やクリニックを即開業できるわけではありません。
設備等が整っていたとしても、医療機関としての役割を担うには、適切な手続きを踏む必要があるのです。

早い段階で行っておきたいのが、保健所への手続きです。
届け出に関しては後述しますが、それ以前に保健所へは事前相談をしておくことをお勧めします。全ては、開業をスケジュール通りに行うためです。
具体的には、診療所の開院に関する計画についての相談を行っておかなければいけません。
スケジュールはもちろん、開院場所や設備などに関する相談をし、そのまま進めても問題ないかといった話し合いの場を持つようにしてください。

こちらも事前相談をしておくことをお勧めしますが、指定医療機関コードを取得するための手続きのため、地方厚生局都道府県事務所へ足を運んでおく必要があります。
タイミングがズレると開院スケジュールにも影響するので、申請書の提出期限をチェックしながら物事を運んでいかなければいけません。

その他、社会保険事務所、労働基準監督署、公共職業安定所への手続きが必要となり、また、税務署にも必要な届け出をした上で手続きを済ませておく、あるいは開業後に手続きを行っておく必要が出てきます。

医院開業に必要な届け出

ここからは、医院開業に必要な届け出を具体的にチェックしていきましょう。

まず、保健所に対しては、「開設届」を提出することが医療法により定められています。
事前に相談しているはずなので不備等はないはずですが、開設日から10日以内に必ずこの届け出を済ませておかなければなりません。
地方厚生局都道府県事務所へは、「保険医療機関指定申請書」を提出します。
また、「基本診療料の施設基準等に係る届出書・特掲診療料の施設基準に係る届出書」を提出。これらは提出期限が毎月決められているので、その点にも注意しながら届け出を済ませるよう計画しておきましょう。

社会保険事務所に提出する書類は、

「健康保険・厚生年金保険新規適用届」
「新規適用事業所現況書」
「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」
「健康保険被扶養者(異動)届」

です。
どのような手続きをするのかによっても提出書類や届け出は変わってきますが、これらの基本的なものを抑えつつ事前に確認しておくようにしてください。

労働基準監督署へは、

「労働保険・保険関係成立届」
「労働保険概算・確定保険料申告書」

を提出。公共職業安定所へは、

「雇用保険適用事業所設置届」
「雇用保険被保険者資格取得届」

を提出し、それぞれ届け出を行います。
さらに税務署へは、

「個人事業の開廃業等届出書」
「給与支払事務所等の開設届出書」
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書兼納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書」
「青色申告承認申請書」
「青色事業専従者給与に関する届出書」
「所得税のたな卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書」

などを提出します。

すぐに必要な届け出と、あるいは確定申告期限までに行わなければならないものがあるなど、届け出によってタイミングは異なってきますが、これらが必要になると頭に入れた上でスケジュール等を組んでいくことをお勧めします。

医院開業に必要なその他の確認事項

手続きや届け出に関して言えば、他には、診療所やクリニックが所在する市区町村の役所に対して「各種医療機関指定申請書」を提出する必要も出てきます。
ただ、これはすべての医療機関に必要なものではなく、生活保護法などの指定を必要とする場合に限られます。
どのような診療を行うのか、ターゲットをどこに定めるのかを考えコンセプトを明確にさせた上で、もし必要であれば申請等を行うようにしてください。

さらには、医師会への入会や挨拶なども行っておきたいところ。
ただし、これも必ず必要というわけではないため、あらゆる事情等を考慮した上で決断してはどうでしょうか。
近年は、この医師会とは距離を置きながら診療を行う診療所やクリニックも増えてきました。
こちらも、コンセプト等を考えつつ決断するといいでしょう。

これらの手続きや届け出には、届出書類や申請書類のみならず、年金手帳や賃金台帳、許認可証や賃貸借契約の写しなど、複数の書類が必要になるケースも少なくありません。
そうしたものが揃っているかどうかの確認も怠らずに行っておきましょう。

医院経営に役立つおすすめの資格

医院経営に役立つ!開業医におすすめの資格

国家資格である医師免許。これを有し、必要な届け出や手続きを踏めば、おおよその診療科目を標榜し医院経営へと乗り出すことが可能です。
資格という視点で見れば、医師免許のみで独立・開業できるわけですが、それだけで必ずしも成功できるわけではありません。
当然でしょう、医師としての腕がないばかりか、経営に関する知識も皆無なままなわけですから。
多くの医師は大学病院などで経験を積んだ上で、技術と知識を蓄えてから開業を目指していくことになります。
言い換えれば、“医師として適切な診療を行う資格”を有しているか否かが重要であり、そこには人間性なども含まれていると言えるでしょう。

“成功”という言葉を出しましたが、よりこれを引き寄せるためには、別途有しておきたい資格がいくつかあります。
「医療経営士」や「医事管理士」と呼ばれるような資格です。
医療経営士は、クリニックなどを経営する上で必要な知識を持っていることを証明する資格で、一般社団法人日本医療経営実践協会が認定団体となっています。
医事管理士は、主に医療事務に関する知識を持っていることを証明するための資格で、一般財団法人日本病院管理教育協会が認定しています。

医療管理士の資格を取るメリット

上で紹介したような資格を取得していなくても、医師免許さえ持っていれば開院することは可能です。
しかし、これらの資格が存在し、その注目度が上がってきていることを考えれば、早々にこれらの資格を取得しておくメリットはあるのかもしれません。

例えば、医療経営士の資格であれば、医療のみならず経営に関する知識を獲得することが可能です。
クリニック等を経営すれば、当然問題や課題に直面することになりますが、それをクリアできなければ経営悪化へと陥り、やがて閉院せざるを得なくなるでしょう。
この資格を取得することで、財務的な戦略や経営マネジメント、サービスに関する戦略等を学ぶことができるため、経営課題や問題のハードルを超えやすくなるというメリットが考えられるのです。

医事管理士は医療管理や情報処理、薬理概論などについて学ぶことができ、クリニックにおいては事務スタッフが担当する分野となることが多いものの、経営者自身がその知識を獲得しておくメリットは計り知れないでしょう。

 

資格取得にかかる期間は?

医療経営士の資格は3段階に分かれていますが、3級から順に試験を受け、合格していかなければいけません。
そのため、短期間で1級の資格を取得することは難しいでしょう。
3級の試験は毎年度3回ほど行われており、2級に関しては同じく2度ほどが行われています。1級は一次と二次とに分かれているため、合わせて年に1回が通例です。
3級から順に試験を受けていかなければならないことを考えれば、1級に合格するには最低でも1年以上はかかってしまうでしょう。
勉強時間等も含めれば、さらにこの期間は延びることになります。

医事管理士は年に2度の試験が行われているため、勉強期間を合わせても数ヶ月間で取得できる可能性が高い資格となっています。

医院開業の流れスケジュール

開業を決意してはじめに行うことは?

「開業しよう」と思った直後に、「なぜ開業するのか」について改めて考えてみましょう。
あらゆる可能性やリスクを整理していくと、もしかしたら、「まだ早いかもしれない」と思い直すこともあるかもしれません。
意したと思ったとしても、それが本当に決意と呼べるような意志の強さを持っているのか、これを改めて再確認しておくことをお勧めします。

自問自答した末、開業する決意が一切ブレないようであれば、その後に行いたいことは、開業時期の決定です。
医師がクリニック等の開業を行うには、あらゆる準備や作業をしなければいけませんが、それもこれもゴールが決まっているからこそ進められるもの。
「準備が整ったら開業しよう」という考え方もあるものの、しかし、それではその準備にも身が入らず、開業時期が次第に延びてしまうケースが出てくるので避けるべき。

やはり、まずゴールである開業時期を具体的に決め、それに向かってどの程度のスパンとスピード感で準備を進めていけばいいのかを考える、このやり方の方が、ずっと良い準備を行うことができるはずです。

医院開業の全体の流れ

開業時期を決定したら、それに向けて具体的なスケジュールを組んでいきます。
スケジュールを組む際に知っておきたいのが、医院開業の全体的な流れです。それを順番に書き出してみましょう。

・立地調査を行なった上で開業地や物件を選定
・収支想定やキャッシュフローなどを含めた事業計画の策定
・資金調達方法や調達先の選定や申し込み
・医院の内装に関する業者の選定やデザインの立案
・診療に用いる医療機器の選定や発注
・スタッフの募集や採用に関する業務
・チラシやWEBサイト作成など宣伝広告に関する業務
・開設に必要な届け出や申請
・医院の開業

非常に大まかではありますが、大体このような流れで医院の開業準備を進めていきます。同時に行える作業ももちろん出てくるでしょう。思っていたよりも時間がかかる作業もあるかもしれません。
立地や業者の選定などは十分なリサーチが必要となるため、慎重に時間をかけて行うことをお勧めします。そうした点も含めて、無理のないスケジュールを策定しておく必要があるでしょう。

医院のコンセプトの決め方

開業しようと決意した段階で、どの診療科目を標榜するのかは、すでに決定しているはず。ただ、細かなコンセプトまで決めている医師は、意外と少ないようです。
これではターゲットを絞ることができません。
できる限り多くの患者さんに診療を提供したい、そうした気持ちはわかりますが、ターゲットが曖昧なままだと成功しづらい傾向があるのも事実。患者にとって選ぶ価値が本当にあるのか否かが掴みにくいためです。

新たに構える医院のコンセプトは、以下の要素をまとめた上で決めていくといいでしょう。

・自身の得意とする分野や治療は何か
・自身の苦手な分野や治療は何か
・自身が行いたい診療はどのようなものか
・自身が行いたくない診療はどのようなものか

通常コンセプトを決定する際には、“得意な分野や治療”と“行いたい診療”に焦点を当てることが多いですが、“苦手な分野や治療”と“行いたくない診療”にも焦点を当てることで、よりコンセプトを明確化させることができます。
自身のウイークポイントなどにもしっかりと目を向けることが重要です。その意識は、コンセプト決定時には忘れないでおきましょう。